アプリケーションノート - 高電圧電源

電源はなぜウォームアップに時間がかかるのですか?

AN-09

電源には通常ウォームアップ時間があり、安定度仕様はその後適用されます。機能的には、装置は電源投入直後に動作可能です。しかし、お使いの用途で非常に安定した出力が必要な場合、電源をウォームアップさせて「熱平衡」に達するようにするとウォームアップドリフトを避けることができ、これについては次に詳述します:

電源の制御と安定化は、高電圧フィードバックデバイダーを使って実際の高電圧出力をサンプリングすることで達成されます。このデバイダー回路網は高インピーダンスの、高電圧抵抗器を多数直列に接続して構成されています。デバイダーの片端は電源の高電圧出力に接続され、もう片方はスケーリング抵抗を通して接地され、これで測定する高電圧出力に比例した低電圧信号が得られます。通常フィードバック信号は0~10Vdcで、これが電源出力電圧の0~100%に対応します。

このフィードバック用デバイダー抵抗列は温度変化に敏感です。これは「温度係数」(TC) と呼ばれ、通常1℃あたりの百万分の一で表されます。よくある温度係数仕様は150ppm/°Cなどです。この場合、抵抗インピーダンス値は、フィードバック用デバイダー抵抗列の感じる温度変化1℃に対して (150/1,000,000) = 0.00015、つまり 0.015% の比率で変化します。実際の電源の例でこれを見てみましょう:

SL50P300 TC= 100ppm/°C (100/1,000,000) = 0.0001 (=0.01%)
(0.01%) (50kV)= 5V

つまり、フィードバック用デバイダー抵抗列の感じる1℃の変化に対して、これに比例した電源出力電圧の変化は5V以下となります。

電源が長期間使われずに置かれていた場合、その内部部品は周囲温度と同じであると考えられます。説明のため、室温は22°C (約71.5°F) で、試験中室温は一定であると仮定します。

電源はオンで、最大電圧、最大電流で動作するように設定されているとします。ここで次の2つの基本的な効果が起こります:

  1. フィードバック用デバイダー抵抗列は、フィードバック電流がフィードバック用抵抗器を流れてI²R損失を生じるために自己発熱をします。
  2. 電源には発熱をする他の部品もあり、これが電源内部の温度上昇をもたらし、これがフィードバック用デバイダー抵抗列の温度上昇につながります。

十分に長い時間が経過した後、電源は新たな熱平衡に達します。この例ではフィードバック用デバイダー抵抗列の温度は28°C (約82.5°F) になったとしましょう (6°C上昇)。

この例の仕様では1℃の変化に対してフィードバック用デバイダーは0.01%以下 (つまり5V以下) 変化します。したがって、期待される全体的変化は次のようになります: (5V/°C) (6°C) = ≤30V

全体的には、これは最大出力電圧の大きさに対して小さなパーセンテージですが、一部のクリティカルな用途によってはこれが大きく響くものもあります。

ではこの変化はどれ程の時間で起こるのでしょうか?これは主に実際の電源の物理的設計によります。装置の熱質量、内部熱伝達特性、筐体内部と外への空気の流れ、特に増倍器の設計が熱時定数に大きく影響します。