アプリケーションノート - 高電圧電源

最大AC 入力電流の計算方法

AN-21

電源の最大入力電流を知ることにより、電気設備要件、ブレーカー、AC 入力ケーブルおよびコネクター、またフローティング アプリケーションで絶縁トランスを選択際の目安を立てることができます。最大入力電流を計算するのは、いくつかの基本のパラメーターと簡単な数学さえ分かっていれば、難しいことではありません。

高圧電源定格出力
全てのスペルマンの高圧電源は最大定格電力が W で表わされています。これが必要な最初のパラメーターで、製品データシートから知ることができます。ほとんどのスペルマンの電源は最大定格電力がモデルナンバーのすぐ隣に表記されています。たとえば、SL30P300/115 は 30kV、正極性、最大300W、115V 入力といった具合です。

電源効率
電源効率は入力電力:出力電力です。効率は80% や0.8 のように % や 1 より小さな小数で表わします。入力電力を導き出すためには、示されている最大出力電力を効率で割ります。

300W/ 0.8 = 375W

力率
力率は有効電力と皮相電力の割合です。通常1未満の小数で表わされます。有効電力は W で表わされ、皮相電力は VA(ボルトアンペア)で表わされます。単相非力率改善スイッチング電源は 0.65 のような一般的に比較的低い力率となっています。三相非力率改善スイッチング電源は 0.85 のような、より高い力率となっています。アクティブ力率改善回路を持つ電源では、 0.98 のような非常に良好な力率となります。上記の例では非力率改善の電源で、単相ラインで供給されていますので、以下のようになります。

375W / 0.65 = 577 VA

入力ライン電圧
次に電源が電力供給を受ける AC 入力電圧がどのように設定されているかを知る必要があります。上記の例では AC 入力電圧は 115V となっています。これは公称電圧で、実際の入力電圧は ±10% と記載されています。ワーストケースを考えて 10% を引き、以下のように計算します。

115V – 10% = 103.5V

最大AC入力電流
577VAを103.5Vで割ると以下のようになります。

577 VA / 103.5V = 5.57 A

もし AC 入力電圧が単相であれば、答えは5.57A です。

三相入力電圧
三相入力電圧の電源は三相で電力を供給されるため、単相電源に比べて力率が優れています。また、三相で電力を供給しているため、相電流は小さくなります。相毎の入力電流を求めるには、入力電流の計算式を√3 (1.73)で割ります。

STR10N6/208 を例として計算してみましょう。STR のデータシートを見ると、最大電力は 6000W で、効率 90%、力率 0.85 となっています。STR は設計により 180V で動作することもできますが、今回の例では 208V の入力電圧で三相とします。以下のように相毎の最大入力電流を求めました。

電源効率
6000 W /0.9 = 6666 W

力率
6666 W /0.85 = 7843 VA

入力ライン電圧
208V – 10% = 187 V

最大AC入力電流
7843 VA / 187 V = 41.94 A (単相の場合)

三相入力での相当たりの電流
41.94 A / √3 (1.73) = 24.21 A/相

以下の二つの等式で以って、単相入力と三相入力の場合を求めることができます。

単相最大入力電流の計算式
入力電流 = 最大電力/{(効率)(力率)(最小入力電圧) }

三相最大入力電流の計算式
入力電流 = 最大電力/{(効率)(力率)(最小入力電圧) (√3)}

この入力電流の計算は、効率と力率を考慮して、電源が最大電力で作動していること、ロー ライン状態で作動していることを前提としたワースト ケースを求めるためのものです。